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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)3965号 決定 1957年4月30日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人内山昭二に対する弁護人田中泰岩の上告趣意について。

論旨は、事実誤認、訴訟法違反、量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

被告人光村隆正に対する弁護人久保田国松、同桃井次の上告趣意について。

論旨第一は、違憲をいうが、その実質は、訴訟法違反の主張に帰し、(刑訴二条一項にいわゆる「現在地」とは公訴提起の当時被告人が任意或は適法な強制処分によって現在する地域を指称し、これに現在する事由の如何を問わないものと解すべきことは当裁判所の判例である)(昭和三〇年(あ)第九一号、同年五月一七日第三小法廷決定、集九巻一〇六五頁)、同第二は、法令違反の主張であり(証人が刑訴一四六条の証言拒否権を持っていたとしても宣誓の上虚偽の陳述をすれば偽証罪が成立すること、被告人自身に黙秘権があるからといって他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは偽証教唆罪の成立することは当裁判所の判例である)(昭和二七年(あ)一九七六号、同二八年一〇月一九日第二小法廷決定、集七巻一九四五頁)、また事実誤認の主張を出でないものであって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

被告人鹿沼充に対する弁護人桃井次の上告趣意について。

論旨は、憲法三七条違反をいうが、その実質は、訴訟手続の法令違反を主張するに帰し、(事実審裁判所の裁量に属する証拠の取捨判断の非難である)、また事実誤認、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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